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ジャズだけど蕎麦屋

蕎麦の写真

大江千里さんの『9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学』という本を読みました。2段組300頁超の大作ですが、とても面白かったので一気に読み終えてしまいました。

内容は、著者が日本でのポピュラーミュージックのキャリアを捨ててニューヨークの大学でジャズを学び、自身の音楽を制作販売するための会社を同地に設立するまでの物語です。

とても感銘を受けたので、その理由について考察してみます。人生の折り返し地点を過ぎた男が異国で人生を再構築しようと格闘する心情を冷静な文体で綴っていることに心を動かされたのだと思います。自分の本当にやりたいことを考え抜き、それに向かって挑んでいく真摯な姿勢は感動を呼びます。

この本を手にしたのはネットで見たインタビュー記事がきっかけでした。その記事では本書の続編となる『ブルックリンでジャズを耕す 52歳から始めるひとりビジネス』が紹介されていたのですが、タイトルに『ひとりビジネス』とあったので関心を持ちました。ミュージシャンとしてだけではなく、ビジネスパーソンとしての自覚もある人なのだと。

本書『9番目の音を探して』にもビジネスに関する記述があります。

~(略)~ 商品の本来の付加価値が混沌とした時代になると、アーティストの個性や深い味が生命線になってきた。でもそれを聴く人に伝える方法は相変わらず1パターンである。それを1人でやることによって自分なりのやり方を模索できないか。手作り暖簾の暖かい味の蕎麦屋のような。1日30食しか出さないルチンの多い蕎麦の店。「30食しか出来ない」を「30食しか作らない」にコンバートさせる発想で。

限定マーケティングに通じるアプローチだと思います。しかし、良質な音楽をお金儲けとダイレクトに結びつけて考えるのは無粋ですね。

著者が設立した会社の名前はPND RECORDS & MUSIC PUBLISHING INC.です。また、PNDはPeace never dies(Peaceは死なない)の略だそうです。著者の目的は経常利益ではなく、自身が作り奏でる音楽でリスナーにPeaceを届けることではないでしょうか。

久し振りにニューヨークのジャズクラブに行ってみたくなりました。そして、ニューヨークに限らずアメリカに行ってみたくもなりました。


大江千里著
『9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学』
KADOKAWA、2015年

<補足>
限定マーケティングについてはビジネススクールでの恩師の一人である小川孔輔教授がブログで書いています。「リーディング・トレンド: 限定マーケティング:~消費者は、究極的には一人一人違ったカスタマイズを好む~」