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情熱というマジック ── ビール営業物語

黄昏のバーカウンターに置かれた1杯のビール

先日友人の経営するクラフトビールの醸造所『シェアードブルワリー』について投稿しましたが、今日は大手ビール会社のサラリーマンが主人公の小説について書きます。

著者である吉村善彦氏はサントリーでの勤務経験があり、その時のエピソードが小説の元ネタになっているようです。

作品の背景となっている80年代をリアルに体験している私には、完璧な娯楽小説として読むことができました。作品の中に登場する「イルカビール」がペンギンのイメージキャラクター(パピプペンギンズ)を使ったサントリー生ビールであることは容易に推測することができましたし、そのビールのテレビCMやその主題歌で流れていた松田聖子の歌も連鎖的に思い出しました。懐かしいですね。

しかし、懐古趣味に浸るだけがこの小説の効能ではないと思います。読者の態度によってはビジネスに関する知見を得ることも可能ではないでしょうか。携帯電話もメールも無かった時代のおとぎ話として消費してしまうだけでは惜しい魅力を秘めた作品です。

確かに逆境を跳ね返そうとする若手営業マンの熱意あふれる行動に対して、テクノロジーによってコミュニケーションのあり方が変わってしまった現代においても機能するのかという点において、疑問を挟む余地はあります。

しかし、コミュニケーションの手段を効率化したり改善することは可能であっても、コミュニケーションによって得られた情報を評価する人の気持ちというのは進化することはないのではないかと思います。

営業という取引先との有効的な関係構築を目的とした活動は、理論やデータによって補完されることはあっても情熱というマジックが作用する余地は十分に残されているはずです。

私の友人に中卒でありながら実力で中堅企業の営業部長に上り詰めた男がいます。過日の彼を知っている私にはにわかには信じられない話です。しかし、その営業部長は営業成績を伸ばすことは簡単なのだと言っていました。断られても諦めなければ良いとのことです。

あなたも週末にでも缶ビールを傾けながらお読みになってみてはいかがでしょうか。次週への活力が湧いてきます。

なお、情熱というマジックは、昨今のブラック企業が強要する“ヤル気”ではありません。違いは自主性にあります。

ビア・ボーイの書影吉村喜彦著 『ビア・ボーイ 』

PHP文芸文庫、2011年(初出は新潮社より2006年)

本作の続編となる『ウイスキー・ボーイ』という小説もあります。そちらもお勧めです。