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雇用なしで生きる = 隣人のために働く

地域共同体のイメージ

前回の投稿から2ヶ月近く経ってしまいました。やはりブログは継続するのは難しいのですね。しかし、難しいからこそ実りがあるものと思って続けていきたいと思います。

 

さて、今回は平川克美さんの『21世紀の楕円幻想論』で紹介されていた『ルポ 雇用なしで生きる : スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦 』という本を取り上げます。

まず、本のタイトルになっている「雇用なしで生きる」とは、「働かない」ということではありません。雇用という企業を中心とした経済システムから離脱して、地域共同体内での贈与に基づいた取引により日々の生活を賄っていこうとする試みです。

これは脱サラをして自営業者として既存の経済システムに直接参加することではありません。リアルな隣人たちと地域共同体をつくり、メンバーそれぞれが提供できる価値を共同体の財として運用することで日々の暮らしを豊かにしようとする取り組みです。

ですので、ライフハックのように生産性や効率性を追求しようとする今日的なものではなく、前世紀的な非効率をも許容できる相互援助の活動です。

具体例として隣人同士で助け合うことのお礼にお金を用いるのではなく「時間」をやり取りする「時間銀行」という取り組みが紹介されています。

「時間銀行」に参加したい人は、ウェブサイトに自分が提供できるサービスを登録しておいて、そのサービスを必要としている人に無料で提供し、その返礼として「時間」を受け取る。その「時間」は自分が他の誰かが提供しているサービスを利用した時にお礼として渡すことができる。さらに、面識のなかったなかった隣人と友達になる機会も無料で付いてくる。

面白そうな取り組みですね。こんなコミュニティーが地元にあったら参加したいですね。

その他にも「物々交換市」や「地域通貨」などの取り組みも紹介されています。

これらの活動の背景にはスペイン国民の怒りがありました。15M(キンセ・エメ)と呼ばれる2011年5月11日にスペインの首都マドリードで起こった政府や富裕層に対する数万人規模のデモをきっかけとした市民運動の中で生まれたもので、政府に依存せずに自分たちで状況を変えていくことを目的にして始めらたそうです。

15Mは後にオキュパイ・ウォールストリートにも影響を与えることにもなったようですが、この本を読むまで15Mについては全く知りませんでした。スペインの経済が不動産バブルの崩壊で大きな被害を受けていたことはなんとなく知っていましたが、この様な運動が起こっていたことは意外でした。というか、スペインがシエスタなどの経済的合理性とは相容れない文化を築いてきたことを思い出しました。

これらの活動が現在のスペインおよび近隣諸国でどれだけ普及していてきちんと機能しているのかどうかは情報が不足しているため判断はできません。しかし、経済的に窮地に追い込まれてしまった弱者が自己防衛のために始めた運動であるため簡単に廃れることはないのだと思いますし、頼れる隣人がいることで得られる安心感を手放すことはしないのではないでしょうか。

日本での取り組み事例も紹介されておりますので参考リンクを張っておきますが、ご興味を持たれた方は本書を是非ともお読みになってください。日本には入ってくることの少ない情報に触れることができます。

『るぽ 雇用なしで生きる』の書影

工藤 律子著
『ルポ 雇用なしで生きる : スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦 』岩波書店、2016年

 

▼参考リンク