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コストプラス的人生設計

おいしそうなスープ

山中俊治さんの著作『デザインの小骨話』を読みました。ご存知の方も多いかと思いますが山中俊治さんはJRのSuica改札機のデザインなどを手掛けたデザイン界の大御所であり東京大学生産技術研究所教授でもあります。本書の内容は著者が学生たちに語ったことの記録としてTwitterでつぶやいたことなどをより詳しく語り直したものとなっています。

とても感銘を受けました。言及したいところは沢山あるのですが、ホームページ制作すなわちWebサイトのデザインを生業とする者としては、ブログにアウトプットするのではなく仕事として出力するために、多くは語らずに胸中に留めておきます。しかし、デザイナーではなくマーケッターとしてのバックグラウンドを持つ私としては著者が奥様とご一緒にフリーランスのデザイナーとして独立した際の仕事の価格設定方法が特に印象に残りましたので書き記しておきます。

独立するにあたって最初に仕事の価格を決めようと考えたそうです。しかし、美大出身ではなかったため先輩などの相談相手が見つからず、世間の相場を知る術がなかった。それで、仕事に関する必要経費をはじめとして、着たい服や食事の内容にいたるまで自身の生活に必要な全てのコストを綿密に見積もり、その総費用と働きたい時間とから仕事の単価を設定されたそうです。

この部分を読んで思い当たりました。「これってコストプラス法じゃないのかな」、と。

最近は市場のニーズを中心にしてマーケティング活動が行われるケースが主流となっていますので、コストプラス法での価格設定などはトレンドから大きく外れている状況にあるのでしょうし、ビジネスの最善前線では陳腐化しているのかもしれません。しかし、著者は次のように述べています。

フリにーなった卒業生たちも、見積には苦労しているようである。聞かれれば私は、私たち夫婦の経験を話す。そのやり方が正しかったどうかは今もわからないが、かといって「相場」を語るような無粋なこともしない。多分いつの時代も「自分の値段」を決められるのは自分しかいない。

いい話ですね。

「自分の値段」を決められるのは自分しかいない

そうですね。著者が決めようとしていたのは製品の価格ではなくて、仕事(=自分)の価格であったわけですから。脱帽です。

山中 俊治 『デザインの小骨話』
日経BP社、2017年